みんなでプログラミングteaching site|プログラミング指導のポイント
みんなでプログラミング
0

To Teachers Who Teach Programming プログラミング教育を行う先生へ

プログラミング指導のポイント

プログラミング指導の3つのポイント

プログラミングの指導に関する書籍や資料は多々出回っていますが、ここでは、言語や教材と共に、指導する上で重要な3つのポイントを押さえましょう。

  1. ①プログラミングの楽しさを体験
  2. ②魔法の言葉「先生もわからないな」
  3. ③先生の役目は学びの羅針盤

プログラミングの楽しさを体験

イメージ:プログラミングの楽しさを体験プログラミングの学び方に、コンピュータを使わず、簡単な身体動作やカード操作などで、体験的に情報処理の考え方を学ぶアンプラグド(CSアンプラグド)と呼ばれる方法もあります。導入あるいはプログラミング経験と生活を結びつけるのに大変有効な教育方法です。しかし、アンプラグドのみではプログラミングを学んだとは言えません。プログラミングの体験が必要不可欠です。
 スポーツを考えてみましょう。バッティングについてテキストでいくら学んでも、実際に投げて打って体験することで初めて実感されます。算数でも同じです。学習指導要領における算数科の目標に「日常の事象について見通しをもち筋道を立てて考え、表現する能力」を育てるとあります。しかし、授業の中で、この考え方だけを取り出すことはせず、「算数的活動の楽しさや数理的な処理のよさ」に気づくことに配慮しながら、算数的な活動に取り組ませているかと思います。
プログラミング教育も同様です。教科の目標との結びつけを考える前に、まずは子どもたちにプログラミングの面白さや楽しさを体験してもらいましょう。同時に、先生方自身もその楽しさ、良さをぜひ体験してください。
研究室の大学院生が、プログラミング教育に初めて取り組む小学校の先生方の意識の変容を追いかけました。最初はプログラミングに必要性を感じず、仕方なく教えると思っていた先生が、プログラミング教育に取り組む中で、子どもたちの変容とその可能性を実感し、教科でのプログラミングにも自ら取り組まれていく変容をされました。ポイントは、子どもと一緒に先生自身もプログラミングで「遊んでみた」ことでした。先生自身がプログラミングの面白さを実感すると共に、子どもたちがプログラミングにすぐ慣れ、想定を超える作品を楽しみながら作る姿を見て、先生の意識が大きく変わりました。
文学、科学、芸術などと同様に、プログラムや技術も人類が生み出し、発展させてきた文化です。そして何よりプログラミングは創造的で面白いものです。プログラミングという人間の文化であり創造な活動を楽しむことをお勧めします。こうした創造的な活動に取り組むことで、子どもたちはプログラミングの知識やスキルを急速に身につけていきます。その次に教科の中にプログラミングを取り入れてみると、格段にスムーズにかつ効率的に展開できるでしょう。そして子どもたちが、プログラミングの面白さと素晴らしさ、奥深さに気がついていく中で、「プログラミング的思考」が養われていくのではないでしょうか。

魔法の言葉「先生もわからないな」

イメージ:魔法の言葉「先生もわからないな」プログラミングの指導では、教材や研修もさることながら、先生方の授業観、学習観の転換が最も重要です。そこで先生方に魔法の言葉「先生もわからないな」をお勧めします。
考えてみれば、プログラミングはこれまでの教育内容とは大きく異なっています。大半の先生方は、子ども時代、教員養成段階、少し前の教員研修等でプログラミングについて学んではいないでしょう。一方、前述のように子どもたちの適応力や吸収力は想像以上です。先生は学んでないが、先生を子どもが簡単に越えていく。これは、プログラミング教育が他の教育内容と大きく異なる点です。そこで授業の方針を変えてみましょう。
プログラミングの授業を始めると、操作や手順がわからないという質問が子どもたちから多々出てきます。そこで「先生もわからないな」と言ってしまう。子どもたちにとってプログラミングは面白いし取り組んでみたい。でも先生もわからない=先生が頼りにならないとなったら、きっと自分たちで何とかしようとするでしょう。そこで先生は、「○○さんに聞いてみて」「○○さん、みんなに紹介して」と子どもたちをつないだり、「ネットで○○と調べてみたら」とヒントを出したりと、子どもたち自身が考え、学ぶようにすることです。
プログラミングに子どもたちが取り組み出すと、急速にスキルを身につける子どもが出てきます。その子を周りとうまく関わらせることで、学級全体がどんどん進む循環が生まれ、先生の想定を超える成果も生まれてくるでしょう。いわば、インストラクションからファシリテーションへの転換です。
子どもたち自らがプログラミングを学び、ねらいである課題解決に取り組む。これこそ、学習指導要領が示す主体的、対話的で深い学びの第一歩ではないでしょうか。

先生の役目は学びの羅針盤

現在の使いやすいプログラミング言語やツールの活用で、子どもたちはプログラミングにすぐに慣れていきます。しかし、面白いとハマっていくことはいいのですが、時に違う方向にそれてしまうことも起きます。例えば、学習のまとめでスライドを作成したが、各種アニメ効果や効果音が面白くなり、画面効果は面白いが、肝心の内容が薄いスライドになってしまったようなイメージです。そのような時に、子どもたちを立ち止まらせ、その活動の目的は何か、何のためのプログラミングなのかを再度押さえることが必要になります。子どもたちの学びの羅針盤として、向かうべき方向を指し示してあげる役目は、先生にしかできないのではないでしょうか。
 以上のように、子どもたちが取り組みたくなる創造的な課題と、お互いに学び合える環境を用意すれば、先生方がプログラミングに詳しくなくても、子どもたち自身で学びは広がっていいきます。先生方には、肩の力を抜いて取り組んでいただければ。そして先生方には、子どもたちの進むべき方向を示しながら、子どもたちの主体的、対話的な取り組みをファシリテートしていただくことで、プログラミング教育として深まっていくでしょう。

参考
文部科学省:小学校学修指導要領(平成29年告示解説)算数編、2017