学習ツール指導マニュアル
モデル化とシミュレーション
- 学年
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高校生
- 1
- 2
- 3
①文化祭の焼きそばの単価を決めよう
概要
モデル化とシミュレーションを学習するときの入り口となるものとして、分類法の1つとなる「確率的モデル」を学ぶところである。表計算ソフトやプログラミングしたときに扱いやすいように、ここでは数式モデルとして単純化し、初期費用や原価などを考慮して利益目標を達成できるようにシミュレーションをする。
指導のポイント
確定モデルとは本来「毎回ほとんど同じ結果が得られるもの」をモデル化したものである。ただ、よく使われる水量の変化などは数式モデルとしては正しいものの、情報の授業で扱うにはあまりにも退屈である。もう少し社会の実情に近づいた預金残高の利息変化も、ボーナス時に預金する額の変化で変動するため、本当の確定にはならない。
そこでまず「文化祭での商品単価を決める」という限定した状態を想定することで、シミュレーションを作りやすく、生徒が身近に感じるモデルを扱えるようにした。
文化祭の限定的な条件は以下の通り。
・販売物品の単価は上限が決められていることが多い。
・毎年の来校者数や同一物品販売の実績からある程度の見込み客数は想定できる。
・仕入れ元を無限に想定できないので販売原価もある程度決まる。
・(金券の種類やお釣り返還の手間から)扱う金種が限定されている。
もっと条件を増やしたり、逆に減らしたりすることで難易度の調整も行える。企業活動で行う商品単価の決定は、損益分岐点という商業的な考え方も含まれ、これは IPAが行う情報処理技術者試験の ITパスポートでも出題される内容である。
それぞれの学校で実際に販売したことのある模擬店の単価を参考に、過去のデータを分析してみてモデルに当てはまるかを検証させても面白い学習が行える。
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高校生
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②アイテムガチャを完成させよう
概要
ここでは何も確定しないサイコロやガチャを取り上げることで、確率的モデルによるモデル化とシミュレーションを学習する。サイコロの出目の確率を確かめたり、正しく無いアイテムガチャのプログラムを修正、改善したりする過程で体験的に学習を深めていくシミュレーションをする。
指導のポイント
「そもそもサイコロは本当にランダムで目が出るのか」と疑問に思ったことはないかどうかを生徒に発問したい。「1の目なんて大きく削られてへこんでいるのに本当に結果は均一?」といった物理的なサイコロに対する疑問や「ネットのゲームで使われるガチャは本当に嘘の無い確率なの?」といったプログラムによる乱数まで、視野を広げて疑問を持たせたい。
その上で、基礎となる「乱数」というものを知るために、乱数ライブラリを利用したプログラムを用いて実際の出目を確認する。その場合、何回サイコロを振ったか(試行したか)によって出方が変化していく(ランダムに近づく)ことを体験させる。
また、先ほどの削り具合やデザインが異なる物理的なサイコロを振るのと同じことが確かめられるように、ゆがんだサイコロとして出目が一定でない乱数を作って、これも試行回数を変えてどうなるかを体験させる。
最後にガチャを想定したプログラムに取り組ませることで、不確定要素である乱数と試行回数の関係を科学的に理解しながら体験を繰り返す。
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③焼きそばとソフトドリンクの仕入れ数を決めよう
概要
①で学んだ「焼きそば販売のモデル化とシミュレーション」を元に、変動する要素を入れて「確定」ではなく「確率」を踏まえた学習に発展させるところである。②で簡易な確率的モデルを学習済みであることを前提に、複数の項目や乱数的な要素を踏まえて、シミュレーションをする。
指導のポイント
今度は商品を2つにして、過去の最小販売数と最大販売数という統計データを得ることで、シミュレーションを行う。その範囲内での販売数を②で学んだ「乱数」の考えを持ち込むことでシミュレーションを行う。
販売数の幅はある程度狭まっているが、そこにさらに天気という予測し得ない乱数を入れることで、複雑化している。コンピュータの良いところは不確定要素が複数あっても、その組み合わせをすべて試してしまえるところである。人間が表を使って手計算をしなくても、乱数を使ってシミュレーションさせてしまえることができる良さを実感させる。
人間がどんぶり勘定で仕入れや単価を決めるのでは無く、シミュレーション結果を見ることで、大きな失敗を避けることができる(もちろんリスクを負ってシミュレーション以上の利益を求める挑戦もできる)。社会活動で行われている経営判断の科学的な手法と難しさを体験させる学習が行える。